イベント情報 Event information

第2回 東西シンポジウムを開催しました<大阪会場>

開催日
2015.5.18(月)《実施レポート》
開催場所
大阪・hu+gMUSEUM
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共通のテーマを東京・大阪の2ヶ所で、それぞれの出演者が語り合う《東西シンポジウム》。

このページでは、大阪会場の様子をお伝えします。  → 東京会場レポート

 

日本でのお米の消費量の減少、若い世代のコメ離れ、お米を食べないダイエット方法、等々。物質面でも精神面でも日本人を支えてきたお米が今、窮地に立たされています。今回のシンポジウムでは、お米の大切さを再発見、輸出量増加のためにできること、お米の新しい活用方法など、お米の可能性について改めて考えました。

 

第1部はお米の知識人を招いての基調講演、第2部はディスカッション。

それぞれの会場がどのような様子だったのか、どんなことを話したのか。

レポートとしてまとめましたので、ぜひご覧ください。

 

 

<東西共通イベント概要>

名 称: 第2回東西シンポジウム

テーマ: お米の力

 

<大阪会場>

日 時:  2015年5月18日(月) 14:30~16:30

場 所: hu+gMUSEUM 5階ハグホール(大阪府大阪市西区千代崎3丁目南2番59号)

出演者: 岩佐十良 氏(株式会社自遊人 代表取締役/クリエイティブディレクター):基調講演・パネリスト

松尾英明 理事(千里山柏屋):パネリスト

西川功晃 理事(サ・マーシュ):パネリスト

門上武司 理事長(株式会社ジオード):コーディネーター

 

 

第1部 基調講演

岩佐十良 氏(株式会社自遊人 代表取締役/クリエイティブディレクター)

農業に取り組むため、自らが率いる編集部を東京から新潟県南魚沼へ移転。お米をつくりながら旅館「里山十帖」も経営し、雑誌『自遊人』もつくる。そうした経験をもとに、基調講演をしていただきました。

 

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■お米の力のもと

お米がとれる稲は、生命力の強い植物です。しかし、田の土壌や水、気候など育つ環境に影響を受けやすく、少しの変化でもお米の味に微妙な違いがでます。もちろん、育て方にもよります。生産者は、そうした繊細なお米を、少しでもいいものにしよう、おいしくしようと、日々努力して育てているわけです。

 

■消費の変化がもたらすこと

農水省の統計によれば、国民一人あたり1年のお米の供給量は、1965年に111.7kgだったのが2012年には56.3kgと半減しています。消費者がお米を食べなくなった分を補っている食料は何か。お米からパン食になり、小麦の消費量が増えました。

パン食とともに増加が目立つのは肉類で、供給量は、1965年の9.2kgから2012年は30.0kgになっています。国内で肉類を供給するには家畜を育てなければなりません。動物にはエサが必要です。これまでエサは輸入していましたが、近年、そのエサを米にしようという動きがあります。食用よりも、そちらが主流になる可能性があります。

 

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■お米の旬

お米作りの一般的なスケジュールは、大雑把に、4月中旬に種まき、5月下旬から6月上旬に田植え、8月上旬から中旬に出穂(しゅっすい)、9月中旬から下旬に稲刈り、10月上旬に出荷となります。10月になると新米が出回るというのが、これまでのお米の旬でした。しかし、近年はこの旬も大きく変わっています。出穂とは、稲にお米のもと・穂がなること。出穂から45日を標準に、その期間に稲穂がどういうふうに育つかが、お米の出来に関わってきます。とくに昼夜の寒暖差が重要で、夜の最低気温が23℃以下になるのが理想とされています。そういう気候で育つとデンプンが十分に蓄えられ、おいしいお米ができるのです。ところが、近年は各地とも出穂時期の寒暖差が小さくなり、さらに最低気温が高くなっているため、全国的に出穂を早めるように育て、以降の稲刈りも出荷も早まる傾向にあるのです。なかには、早世品種ではないのに8月下旬には稲刈り、9月には新米が出回ることもあるほどです。

 

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■お米の商品価値

早生品種なら話は別ですが、お米に関しては旬の先取りはおすすめできません。出穂時期によく育つための条件を満たしているとはとても思えない、つまりおいしいとは言えそうもないお米が早く出回るのは、いかがなものか。しかし現実は、9月が新米の高値で売れるピークになっています。魚沼産のようなブランド米でないお米は、他より早く作るほうが高く売れますし、早く売らないと売れ残ってしまう。12月末までしか新米と呼べない決まりとあれば、なおさらです。お米には、銘柄ごとに農水省が公表する相対取引価格という基準はありますが、誰でも自由にお米を流通・販売できるようになった現在、お米商戦は他の商品と同じ経済原則で動くのです。生産者には補償制度というものがあり、作物がだめになったときには補償される。また、作物によっては助成金や交付金が出る。それが少なからず、意識の低い生産者が現れる要因になっています。ちなみに、現行の制度では、主食米より飼料米を作るほうが得という人もいます。そんな現状でも、コストを切り詰め、おいしくなるように育て、質や収量を高める努力を続けている生産者はいるわけで、そのお米が安くなることは日本の農業の終焉を早めるし、そもそも日本人がおいしいお米を食べられなくなります。

 

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■消費者に求められること

今こそ、生産者・農家のやる気を喚起させねば、日本のお米の未来はありません。いつまでもおいしいお米を食べたいと思うなら、料理人をはじめ消費者には、生産者・農家に向け、あなたの作ったお米はおいしいと伝えてほしい。もっと、おいしいお米がほしいと声をあげてほしいのです。苗は地域ぐるみで一斉に用意するように、お米づくりは一軒だけで支えられるものではないので、できれば、グループで、ある地域のお米をまとめて買うようにするのが最も効果的だと思われます。それも、適正価格で。というのが、お米をつくる側からの願いです。

 

<記録より発言要約・抜粋>

 

 

 

第2部 ディスカッション

パネリスト

岩佐十良 氏(株式会社自遊人 代表取締役/クリエイティブディレクター)

松尾英明 理事(千里山柏屋)

西川功晃 理事(サ・マーシュ)

コーディネーター

門上武司 理事長(株式会社ジオード)

 

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■各立場から

松尾理事:

和食でお米といえば、ご飯。日本料理の料理そのものが進化するなかで、ご飯の位置は不動です。食事を形成するうえでの主役ですね。ご飯は炊きたてが一番おいしい。私は、炊きたてをタイミングよくお出しすることを大事にしています。昔はどの家でも、ご飯が炊けるのに合わせて食事していたものです。ところが、家庭でのご飯に対する意識が変わってきていると思われます。最近はご飯を保温できる機器も充実していて、炊きたての“ありがたみ”が薄れているのではないかと気がかりです。

 

西川理事:

確かに、炊きたてのご飯の味は忘れられません。パンの場合、焼きたてはまだ完成していない状態です。ブリオッシュやクロワッサンは例外ですが、パンの焼きたては消化に悪いといって食べない人が、海外では多いですよ。本来は、時間をおいて水分が程よく抜けた状態がベストなのです。それでも、焼きたてを売りにするところがあるのは、身近になると何でも受け入れができてしまう日本人だからでしょう。そういう意味で、コンビニとかでご飯がすぐ買えたり、お米が身近になりすぎて意識しなくなったのではないでしょうか。

 

■米粉について

西川理事:

私は、和食の食卓に合うパンを作りたいと思っていて、米粉のパンにも取り組んでいます。ここに米粉100%(グルテン入り)のパンを持ってきましたので、試食してください。小分けにして袋に入れてきたから、しなっとしていますが、ほんとは表面がザクっとして中はモチモチとした食感が特徴です。風味も確かめてください。やや甘味を持っています。日本人の食感、和テイストに合うと思っています。米粉パンを使ってくれている日本料理店では、肉を炭火で焼き、米粉パンも炙って出していました。

 

松尾理事:

(試食して)これなら、ひとつの食材として挑戦してもいいと思いますね。

 

岩佐氏:

米粉は一時ほど注目されなくなりましたが、その理由は、小麦粉に近づけようとしたからだと思います。そもそも小麦粉の代用品ではないんですね。米粉は米粉、その良さがある。米粉でもパンが作れます、ではなく、米粉の良さを生かしたパン、あるいはパンのようなものとして広まればいいなと思います。

 

西川理事:

米粉と小麦粉を半分ずつで両方兼ね備えたプチ・パンも作っていますが、日本では、米粉の含有率など米粉パンについての決まりはなく、したがって、今のところ評価はまちまち。もっとも、米粉100%のパンにしても、私はパンとは思っていません。イタリア語で“〜のようなもの”を意味するcome(コメ)とパンを意味するpane(パーネ)で「コメ・パーネ」と名付けていまして、あくまでもパンのようなものなんです。これからさらに、米粉の可能性を探っていきたいと思っています。

 

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■お米のこれから

松尾理事:

和食の評価は海外で高いのですが、その範囲は結構広く、いろんなものに関心が集まる。最近は、特にアジア圏の国に行くと日本のお米が注目されているのがわかります。そうして逆に、日本でも見直されるといいなと思います。例えば、休日にはご飯を炊いて、炊きたてを食べようという広め方もあるのではないでしょうか。

 

岩佐氏:

私は、お米の味にもっと目を向けて、おいしくいただくための方法やおいしさの評価をどうするか考えていくことで可能性は開けそうに思えます。おいしいと評価してくれる仕組みがあれば、生産者も今よりやりがいが出るはず。農家の高齢化で後継者がいないといわれますが、お米作りの後継者は確実にいるんです。そういう人たちの活路を開いていくためにも、現状のお米の値段は決して高くないと社会に認めさせることも必要だと思います。

 

門上理事長:

お米は文化的にも他の食材とは一線を画す存在です。日本には、主食用の作物として作られてきた長い年月の間に蓄積された知恵やノウハウが膨大にあって、それがお米の力ともいえるでしょう。おいしいお米を作るのにも、おいしくいただくのにも、いろんなことを知ることで課題も出てくる。輸出を増やすにも戦略が必要です。当学会はいろんなジャンルの方が集っているからこそ、多角的に研究できるのが強みです。岩佐さんが提示されたおいしさを評価する仕組みは、食品の表示も含めて、これからさらに検討していかなければならないと思いました。

 

<記録より発言要約・抜粋>

 

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